アニメ見ながら経営。

その時、株価は。

日々のニュースに対して株価がどのように反応したかを解説・考察。

ソフトバンクG、株主総会で株価3.7%上昇

出所:みんかぶ

ソフトバンクグループ(SBG)は21日、東京都内で定時株主総会を開いた。孫正義会長兼社長は「守りは十分にできた。反転攻勢だ」と述べ、傘下の英半導体設計大手アームを軸に人工知能(AI)事業を中核にすえる考えを強調した。創業以降、主力事業を変え続けてきたSBGは、現在の投資主体のビジネスから実業との両立をめざす事業構造への再転換を探る。

出所:日本経済新聞『ソフトバンクG・孫氏「AIで反転攻勢」 投資と実業両立へ』

 6月21日にソフトバンクグループの株主総会が開催されました。孫正義会長兼社長は2022年11月の決算記者会見を最後にSBGトップとして表舞台から遠ざかっていた(日本経済新聞『ソフトバンクG総会 孫正義社長「AI革命の先端を担う」』より)ため、その発言が注目されていました。

 総会に登場した孫氏は2期連続で巨額赤字を計上したグループの業績には触れず、その発言のほとんどがAIに関するものだったようです。9,701億円の最終赤字を計上する中で業績に触れないというのは無責任にも思えますが、上記の図表のように、株主総会が開催された21日の終値は6,937円となり、前日から3.7%上昇しました。株主は現在の業績悪化以上に、孫氏の話からグループの将来性に期待を寄せたようです。このような事例を見ると、現況が悪いときに株主に対していかに将来への期待を感じさせるかが、経営者に求められる能力の一つであると感じます。

キヤノン、市場は自社株買い1回目よりも2回目の方に大きく反応

出典:みんかぶ
※5月18日を0とした株価上昇率

キヤノンは15日、500億円を上限に自社株買いを実施すると発表した。16日〜8月21日に発行済み株式総数(自己株式を除く)の1.6%に当たる1600万株を上限に買い付ける。自社株買いは5月に続いて今期2度目で、計約1000億円となる。株主還元を積極化するとともに将来のM&A(合併・買収)などに備える。

出典:日本経済新聞「キヤノン、自社株買い500億円 今期2度目」(2023/06/15)

 キヤノンは5月17日に続き、6月15日に2回目の自社株買いを発表しました。1回目の自社株買いでは株価が上昇していましたが、2回目では株価はどのように反応したのでしょうか。

 まず、1回目の自社株買いによる株価反応についてです。キヤノンは5月17日の取引終了後に自社株買いを発表しました。その結果、翌日18日の株価は17日から3.6%上昇しています(17日:3250.0円→18日3367.0円)。その後も上記のチャートのように、日経平均をアウトパフォームする上昇率で株価を上昇させました。

 次に、2回目の自社株買いによる株価反応についてです。キヤノンは6月15日の取引終了後に自社株買いを発表しました。その結果、翌日16日の株価は15日から4.9%上昇しています(15日:3610.0円→16日3788.0円)。この上昇率は1回目を超えるものであり、上記のチャートのように日経平均をアンダーパフォームし始めたところで、再びアウトパフォームに転じました。

 このように、キヤノンの2回目の自社株買いに対する株価反応は、1回目よりも大きなものとなっていました。その要因としては、1回目の自社株買いによって株価が上昇していたため、キヤノン株に注目していた投資家が増えていたことが考えられます。今後もPBR1倍割れ要請に応じた3回目の自社株買いが発表される可能性もあるため、その時はさらに株価反応を比較したいと思います。

NECはPBR1倍割れ要請の先にある理想形?

 

「成長のチャンスは潤沢で、自社株買いではなく事業機会に投資して改善するのがあるべき姿」
出典:日本経済新聞『(決算トーク)「自社株買いより成長投資」
NECの森田隆之社長』(2023/05/03)
 

 NEC日本電気)の決算に際して、森田社長は上記のように自社株買いよりも成長投資を優先させる姿勢を示しました。東証がPBR1倍割れ解消要請によって自社株買いなどの株主還元の強化を促す中、NECの姿勢はその流れと逆行するものと考えられますが、NECの株価は上昇し続けています。

出典:株探

 NECは4月28日の取引終了後に2023年3月期の決算を発表し、その翌営業日の5月1日に株価は+14.2%の急上昇となりました(28日終値5,210円→1日終値5,950円)。その後も株価は上昇し続け、6月9日には株価は決算直前と比べて+34.2%となっています(28日終値5,210円→9日終値6,993円)。

 自社株買いに消極的な姿勢にも関わらず株価が上昇している理由として、好決算が挙げられます。FISCOによると、2023年3月期の営業利益は市場コンセンサスを上回り、2024年3月期の予想営業利益も市場コンセンサスを上回るものでした。また、同時に増配も発表しています(FISCO「NEC---急伸、市場想定を大きく上回る好決算に買いインパクト」(2023/05/01))。

 このように自社株買いに消極的でも好業績を実現させることで株価を上昇させたNECの例は、PBR1倍割れ解消要請の先にある理想形と言えるのではないでしょうか。自社株買いを始めとする株価還元は企業の剰余金が原資であり、株主還元を増やせば投資に回す資金が少なくなるため、株主還元に積極的であり続けるのは現実的ではありません。そのため、PBR1倍割れ解消要請に応じて株主還元を増やした後に、効率的に利益を生むことができるようになれば、株主還元を緩めることが必要になってきます。そのような点から、PBR1倍以上を達成し(2023年6月9日時点で1.1倍、バフェット・コードより)、自社株買いに消極的でありながら好決算の実現によって株価を上昇させたNECは、PBR1倍割れ解消に取り組む企業のお手本になると考えられます。

 

会社予想とアナリスト予想の乖離によって株価反応にどのような違いがあるか

日経平均株価が高値圏で推移するなか、市場で企業業績への関心が高まっている。2024年3月期の最終損益の上方修正期待が高い企業はどこか。アナリスト予想と会社予想の乖離(かいり)額を集計すると、主力薬が好調な武田薬品工業が乖離額プラスの2位に、稼ぎ頭が分散し業績に安定感のあるソニーグループが3位に入った。一方、資源価格の影響を受けやすい電力や商社は下振れが警戒されている。

出典:日本経済新聞「決算ランキング(3)武田2位、難病薬の拡販期待 会社と市場予想の乖離額」(2023/06/01)

 

 2023年も6月を迎え、多くの企業で2023年3月期の決算および2024年3月期の業績予想が発表されました。日経新聞では上記のようにアナリスト予想を会社予想が上回る/下回る企業の乖離額をランキング化しています。これらの乖離額が大きい企業では、株価はどのように変化したのでしょうか。本記事ではプラス乖離(アナリスト予想>会社予想)の1位と、マイナス乖離(アナリスト予想<会社予想)の1位の決算発表に対する株価反応を検証します。

 まず、プラス乖離1位のトヨタです。5月10日の場中に決算短信を開示しましたが、前営業日の9日から株価が上昇しており、10日の終値は前日比+0.8%と小幅な上昇になりました(9日:1916.5円→10日:1931.5円)。

出典:株探


 次に、マイナス乖離1位の中部電力です。4月28日の取引終了後に決算短信を開示し、翌営業日の5月1日の終値は前日比+3.7%となりました(28日:1519円→1日:1554円)。

出典:株探


 このように、意外にもプラス乖離1位のトヨタよりも、マイナス乖離1位の中部電力の方が決算発表直後の株価反応が大きいという結果になりました。プラス乖離の方が今後上方修正の余地があるという点で株価が上昇すると思っていたのですが、このような結果になったのにはどのような理由があるのでしょうか。

 理由の一つとして、中部電力が決算と同時に中期経営計画の進捗も開示したことが挙げられます。この中で、経常利益が2025年の目標である1,800億円に対して現時点で1,560億円まで到達し、ROICも目標の3.0%に対して現時点で2.9%まで上昇していることを解説しています。一方でトヨタでは増配&自社株買いの発表があったものの、こうした今後の計画に関する開示はありませんでした(そもそもトヨタは中期経営計画を公表していない)。このように中部電力では、将来の成長に対する期待を大きくさせるような開示があったことが、株価の上昇に繋がったのかもしれません。

出典:中部電力「中期経営計画の進捗状況」(2023/04/28)


 以上のように、今回のケースではプラス乖離(アナリスト予想>会社予想)だからといって株価が大きく上昇するというわけではなく、むしろマイナス乖離(アナリスト予想<会社予想)の方が株価が大きく上昇するという結果となりました。これらのことから、決算発表ではアナリスト予想と会社予想の乖離だけではなく、他の開示も含めて考慮することが株価反応を捉えるうえで重要だと考えられます。

凸版印刷、株価上昇の理由を「期待」から「実績」にできるか

出典:凸版印刷 中期経営計画(2023年5月16日公表)

 

日本経済新聞「凸版印刷、17年ぶり高値 還元強化への好感続く」(2023/5/26)

26日の東京株式市場で凸版印刷株が一時前日比141円(5%)高の3045円まで上昇した。株式分割など考慮後で2006年5月以来、17年ぶりの高値をつけた。PBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正に向けて株主還元を強化している点が好感された。終値は126円(4%)高の3030円だった。

 凸版印刷の株価が好調で、17年ぶりの水準まで上昇しました。その理由として、主に東証によるPBR1倍割れの改善要請に応じた、大規模な株主還元を発表したことが挙げられます。2023年5月16日に公表した中期経営計画によると、3年間で1,000億円の自社株買い・総還元性向50%などといった株主還元を打ち出しています(上掲の図表を参照)。

 

 このニュースを受けて私が感じたのは、「期待」だけではなく「実績」を伴わなければ株価が大きく下落するリスクがあるのではないかということです。上記のように今回の株価上昇は主に株主還元の強化が発表されたことが理由と考えられますが、今後も長期的に株価を上昇させるにはやはり業績を成長させることが必要になります。

 それでは直近の凸版印刷の業績はどのようになっているかというと、以下の図表のように当期純利益は前年比-50.6%と大幅な減益となっています。セグメントごとの内訳を見ると、主力の情報コミュニケーション事業が-16.3%、生活・産業事業が-17.6%の営業減益となった一方で、半導体需要の増加を受けたエレクトロニクス事業が60.6%という大幅な営業増益となっています。しかし、エレクトロニクス事業の売上高が全体に占める割合は15%ほどであり、今後の業績回復のためには情報コミュニケーション事業と生活・産業事業で利益を生み出していくことも重要になります。

出典:凸版印刷 2023年3月期 通期決算説明会プレゼンテーション資料

 このような業績不調に今後改善が見られなければ、最近の株主還元によって大きく株価が上昇している分、その反動で大きく株価が下落するリスクがあるのではないでしょうか。つまり、現在の株価上昇は主に「期待」によるものであり、今後も長期的に株価が上昇していくためには「実績」に注目していくことが重要だと考えます。

日経電子版の販売店特別キャンペーンは連続して使えるのか?

 

ビジネスマンや投資家にお馴染みの日本経済新聞では、販売店のサイトから申し込むと電子版を1カ月または2カ月無料で購読できるというキャンペーンを不定期に行っています。

ニュースサービス日経 練馬

私もこのキャンペーンを使って2カ月無料で電子版を利用させてもらったことがあります。

しかし、無料期間が終わった後にも、他の販売店で無料キャンペーンを実施しているのを見かけました。

そこで私が思ったのは、「販売店の無料キャンペーンを利用した後に、他の販売店の無料キャンペーン、というように連続してキャンペーンを利用していけば、長い間無料で電子版を読めてしまうのでは?」ということです。

キャンペーンの注意事項も調べてみましたが、連続して販売店のキャンペーンを利用できるかについての記載は見当たりませんでした。

そこで、日経新聞の問い合わせフォームから問い合わせてみました。

すると、次のような返信が来ました。

 

お知らせいただいたメールアドレスで、日経IDおよび電子版登録会員(無料)の登録があり、無料体験期間内の2022年○月×日に日経電子版(有料)の解約手続きが完了されていることが確認できました。

売店特別割引キャンペーンのご利用は、日経電子版(有料)の解約から1年以上空けてお申し込みいただくようお願いをしております。

 

やはり、違う販売店であっても無料キャンペーンは連続して利用できず、電子版の解約から1年以上経過しなければ利用できないようです。

しかし、日経IDの情報をもとに解約から1年経っているかを調べているようなので、複数のメールアドレスを使って複数の日経IDを作成することで、無料キャンペーンを連続して利用するという悪用をしている人もいるのでは。

もちろんこのような利用は日経の規約違反なので、絶対に行ってはいけません。

 

このように1カ月または2カ月無料の販売店特別キャンペーンは連続して利用することはできませんが、日経電子版のお試しとしては良いキャンペーンだと思うので、気になる方はぜひご利用ください。

U-NEXTとParaviの統合に対する株価反応

2月17日、動画配信プラットフォーム「U-NEXT」を運営するUSEN-NEXT HOLDINGSはプレミアム・プラットフォーム・ジャパン株式交換によって完全子会社し、同社が運営する動画配信プラットフォーム「Paravi」と「U-NEXT」を統合することを発表しました。

この統合により、国内最大の動画配信プラットフォームが誕生するそうです。

さらに、USEN-NEXT HOLDINGSは株式交換に必要な株式を調達するため、自社株買いの実施も発表しています。

 

この大きなニュースに、USEN-NEXT HOLDINGSの株価は大きく反応しています。

出典:株探

サービス統合の発表は2月17日(点線)でしたが、その日の取引終了後での発表だったため、その次の営業日である2月20日に反応が見られるはずです。

前年11月9日と12月1日には2400円が天井ラインとなっていましたが、それを超えて2月20日には一時2700円台を付けています。

ただ、発表の前日である16日から大きく上昇している点が少し気になります。

ザっと探した限りでは16日前後に他の大きなニュースは確認できなかったため、発表前に情報が漏れていたのかもしれません。

 

このように、「U-NEXT」と「Paravi」の統合には大きな期待が市場から寄せられていることがわかります。

しかし、競合には「Amazon Prime Video」や「Netflix」といった巨大企業のプラットフォームが存在するため、個人的には決して明るい未来が待っているとは考えていません。

しかも「動画コンテンツ配信」というサービスは差別化するのが難しいので、統合だけで終わらず、競争力の高いアイデアをどんどん生み出していただきたいです。