アニメ見ながら経営。

その時、株価は。

日々のニュースに対して株価がどのように反応したかを解説・考察。

凸版印刷、株価上昇の理由を「期待」から「実績」にできるか

出典:凸版印刷 中期経営計画(2023年5月16日公表)

 

日本経済新聞「凸版印刷、17年ぶり高値 還元強化への好感続く」(2023/5/26)

26日の東京株式市場で凸版印刷株が一時前日比141円(5%)高の3045円まで上昇した。株式分割など考慮後で2006年5月以来、17年ぶりの高値をつけた。PBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正に向けて株主還元を強化している点が好感された。終値は126円(4%)高の3030円だった。

 凸版印刷の株価が好調で、17年ぶりの水準まで上昇しました。その理由として、主に東証によるPBR1倍割れの改善要請に応じた、大規模な株主還元を発表したことが挙げられます。2023年5月16日に公表した中期経営計画によると、3年間で1,000億円の自社株買い・総還元性向50%などといった株主還元を打ち出しています(上掲の図表を参照)。

 

 このニュースを受けて私が感じたのは、「期待」だけではなく「実績」を伴わなければ株価が大きく下落するリスクがあるのではないかということです。上記のように今回の株価上昇は主に株主還元の強化が発表されたことが理由と考えられますが、今後も長期的に株価を上昇させるにはやはり業績を成長させることが必要になります。

 それでは直近の凸版印刷の業績はどのようになっているかというと、以下の図表のように当期純利益は前年比-50.6%と大幅な減益となっています。セグメントごとの内訳を見ると、主力の情報コミュニケーション事業が-16.3%、生活・産業事業が-17.6%の営業減益となった一方で、半導体需要の増加を受けたエレクトロニクス事業が60.6%という大幅な営業増益となっています。しかし、エレクトロニクス事業の売上高が全体に占める割合は15%ほどであり、今後の業績回復のためには情報コミュニケーション事業と生活・産業事業で利益を生み出していくことも重要になります。

出典:凸版印刷 2023年3月期 通期決算説明会プレゼンテーション資料

 このような業績不調に今後改善が見られなければ、最近の株主還元によって大きく株価が上昇している分、その反動で大きく株価が下落するリスクがあるのではないでしょうか。つまり、現在の株価上昇は主に「期待」によるものであり、今後も長期的に株価が上昇していくためには「実績」に注目していくことが重要だと考えます。