アニメ見ながら経営。

その時、株価は。

日々のニュースに対して株価がどのように反応したかを解説・考察。

会社予想とアナリスト予想の乖離によって株価反応にどのような違いがあるか

日経平均株価が高値圏で推移するなか、市場で企業業績への関心が高まっている。2024年3月期の最終損益の上方修正期待が高い企業はどこか。アナリスト予想と会社予想の乖離(かいり)額を集計すると、主力薬が好調な武田薬品工業が乖離額プラスの2位に、稼ぎ頭が分散し業績に安定感のあるソニーグループが3位に入った。一方、資源価格の影響を受けやすい電力や商社は下振れが警戒されている。

出典:日本経済新聞「決算ランキング(3)武田2位、難病薬の拡販期待 会社と市場予想の乖離額」(2023/06/01)

 

 2023年も6月を迎え、多くの企業で2023年3月期の決算および2024年3月期の業績予想が発表されました。日経新聞では上記のようにアナリスト予想を会社予想が上回る/下回る企業の乖離額をランキング化しています。これらの乖離額が大きい企業では、株価はどのように変化したのでしょうか。本記事ではプラス乖離(アナリスト予想>会社予想)の1位と、マイナス乖離(アナリスト予想<会社予想)の1位の決算発表に対する株価反応を検証します。

 まず、プラス乖離1位のトヨタです。5月10日の場中に決算短信を開示しましたが、前営業日の9日から株価が上昇しており、10日の終値は前日比+0.8%と小幅な上昇になりました(9日:1916.5円→10日:1931.5円)。

出典:株探


 次に、マイナス乖離1位の中部電力です。4月28日の取引終了後に決算短信を開示し、翌営業日の5月1日の終値は前日比+3.7%となりました(28日:1519円→1日:1554円)。

出典:株探


 このように、意外にもプラス乖離1位のトヨタよりも、マイナス乖離1位の中部電力の方が決算発表直後の株価反応が大きいという結果になりました。プラス乖離の方が今後上方修正の余地があるという点で株価が上昇すると思っていたのですが、このような結果になったのにはどのような理由があるのでしょうか。

 理由の一つとして、中部電力が決算と同時に中期経営計画の進捗も開示したことが挙げられます。この中で、経常利益が2025年の目標である1,800億円に対して現時点で1,560億円まで到達し、ROICも目標の3.0%に対して現時点で2.9%まで上昇していることを解説しています。一方でトヨタでは増配&自社株買いの発表があったものの、こうした今後の計画に関する開示はありませんでした(そもそもトヨタは中期経営計画を公表していない)。このように中部電力では、将来の成長に対する期待を大きくさせるような開示があったことが、株価の上昇に繋がったのかもしれません。

出典:中部電力「中期経営計画の進捗状況」(2023/04/28)


 以上のように、今回のケースではプラス乖離(アナリスト予想>会社予想)だからといって株価が大きく上昇するというわけではなく、むしろマイナス乖離(アナリスト予想<会社予想)の方が株価が大きく上昇するという結果となりました。これらのことから、決算発表ではアナリスト予想と会社予想の乖離だけではなく、他の開示も含めて考慮することが株価反応を捉えるうえで重要だと考えられます。