アニメ見ながら経営。

その時、株価は。

日々のニュースに対して株価がどのように反応したかを解説・考察。

NECはPBR1倍割れ要請の先にある理想形?

 

「成長のチャンスは潤沢で、自社株買いではなく事業機会に投資して改善するのがあるべき姿」
出典:日本経済新聞『(決算トーク)「自社株買いより成長投資」
NECの森田隆之社長』(2023/05/03)
 

 NEC日本電気)の決算に際して、森田社長は上記のように自社株買いよりも成長投資を優先させる姿勢を示しました。東証がPBR1倍割れ解消要請によって自社株買いなどの株主還元の強化を促す中、NECの姿勢はその流れと逆行するものと考えられますが、NECの株価は上昇し続けています。

出典:株探

 NECは4月28日の取引終了後に2023年3月期の決算を発表し、その翌営業日の5月1日に株価は+14.2%の急上昇となりました(28日終値5,210円→1日終値5,950円)。その後も株価は上昇し続け、6月9日には株価は決算直前と比べて+34.2%となっています(28日終値5,210円→9日終値6,993円)。

 自社株買いに消極的な姿勢にも関わらず株価が上昇している理由として、好決算が挙げられます。FISCOによると、2023年3月期の営業利益は市場コンセンサスを上回り、2024年3月期の予想営業利益も市場コンセンサスを上回るものでした。また、同時に増配も発表しています(FISCO「NEC---急伸、市場想定を大きく上回る好決算に買いインパクト」(2023/05/01))。

 このように自社株買いに消極的でも好業績を実現させることで株価を上昇させたNECの例は、PBR1倍割れ解消要請の先にある理想形と言えるのではないでしょうか。自社株買いを始めとする株価還元は企業の剰余金が原資であり、株主還元を増やせば投資に回す資金が少なくなるため、株主還元に積極的であり続けるのは現実的ではありません。そのため、PBR1倍割れ解消要請に応じて株主還元を増やした後に、効率的に利益を生むことができるようになれば、株主還元を緩めることが必要になってきます。そのような点から、PBR1倍以上を達成し(2023年6月9日時点で1.1倍、バフェット・コードより)、自社株買いに消極的でありながら好決算の実現によって株価を上昇させたNECは、PBR1倍割れ解消に取り組む企業のお手本になると考えられます。